柵に背をあずけて空を見る。


空は嫌になるくらい青々としている。


私は目を瞑って、考え事をする。


すると扉を開ける大きな音がした。


そして、近づいてくる足音。


『陽菜!お前なぁ、また勝手にこんなとこ来て!』


そう、こわい顔をして怒るのは


私の幼馴染みであり、彼氏であり、

私のとても大切な人...那智。


「ごめんね。」


そう小さく謝れば、彼は諦めたように溜め息をはく。


『たくっ...部屋行ったらいないし、焦っただろ。どっか行きたいときは、俺が一緒に行くから。』


な?と言い聞かせるようにいう彼。


「....はい..」


そう素直に返せば、彼は優しく笑って私の頭を撫でる。


『....で、何してたの?』


「...ちょっと考え事。」


『ふーん、どんな考え事?』


「...内緒。」


『なんだよ、教えてくれないの?』


そう言って私の頭にコツンと彼の頭が触れる。


「教えないの」


『とか言って、本当は俺のこと考えてたんだろー』


そう冗談混じりに笑って、私の瞳を覗きこむ那智。


「...何言ってるの、那智の自意識過剰。」


私がそう言うと、


『誰が、自意識過剰だとー?』


そう言って私の髪をクシャクシャする。


__私は那智に抱き付いた。

ギューっと強く強く腕に力を込めて。


そんな突然のことに少し驚いたような那智は、
それでも何か言うでもなく、すぐに私の背中に
腕をまわしてくれた。


「....那智..」


私がそう名前を呼べば、


『ん?』


と優しく応えてくれる。


「...那智」


『どした?』


「...那智...」


『...陽菜?』


「...オレンジジュース飲みたい。」


私がそう言うと、彼の盛大な溜め息が聞こえる。


『...で、俺に買ってこいって?』


「...うん」


『...しょうがねぇなー
じゃあ、買ってくるからちょっと待ってろ。』


そう言って、ここにいるんだぞ。
と那智は念をおすと、早足に扉に向かっていった。


そんな彼の後ろ姿を見送り、
私はその場にしゃがみこんだ。



___ねぇ、那智?

さっきね、本当はずっと
那智のこと考えてたんだ。

ねぇ、那智。....ごめんね。


私は胸がイタくて、涙が止まらなくなった。


「ごめんねっ....那智。」


私はただ、ひたすらに青空の下...謝った。





__

____



ピーーーッ.....



あいつは...陽菜は静かに息をひきとった。

病院のベッドの上で。


陽菜は俺のすべてだった。


陽菜は幼い頃から病気がちで、体が弱いのに
いつも笑っていた。

...俺の前では。

でも、俺にはわかっていたんだ。


だって、ずっと側にいたんだから

誰よりも大切で愛しい彼女の。



俺は花柄の綺麗な便箋を手に取った。


そして、中から二つに折られた紙を見た。




__Dear 那智


俺の好きな陽菜の丁寧な字で書き始められていた。




__ねぇ、那智。

こんな私とずっと一緒にいてくれて

本当にありがとう。

ねぇ、那智。

那智は私のこと好きだった?

なんて、聞かなくても知ってるよ!


俺はいつか屋上で話したことを思い出して笑う。

『...自意識過剰なのは陽菜じゃん。』


那智は口は悪いし、ちょっと鬱陶しいくらい心配性で

だけど、それは私のことを想ってくれてのことで。


『初めのただの悪口だろ...』


私が我が儘言っても、結局は聞いてくれて。


『そうだよ、急にオレンジジュース買ってこいとか...』


本当は誰よりも優しくて温かい人だよね。


『...陽菜』


そして、そんな那智の人生を私が縛ってしまって

本当にごめんなさい。

早く、少しでも早く、那智を私から
解放しなくちゃって思ってた。

だけど、私は優しい那智に甘えてた。

那智は私のすべてだったから。


それは初めて聞く陽菜の本音。

『...なんで謝るんだよ...
ただ俺が一緒にいたかったからで.
俺だって陽菜が俺のすべてだった。』


那智は私といて後悔したことある?


『あるわけねぇよ!』


私は那智といれて幸せだったよ。

那智は幸せだった?


俺はそんな言葉が綴られている手紙に
堪らず、涙をこぼしていた。

『ったり前だ!...そんぐらいわかれよ、バカ。』


ねぇ、那智。

泣かないで。


『......え?』

俺は思わずその文字を読み返した。


__泣かないで。

それは、まるで俺が泣くとわかっていたかのように。


那智は笑って。

ずっとずっと、笑っていて。


『....ひ..なっ...陽菜..』


これから先、那智が幸せなことを

心から願っています。

__From 陽菜



『...陽菜...ありがとう』

俺は陽菜に届くと信じ、そう言った。



すると、窓から温かい風が吹き込んだ。


それはまるで、陽菜が返事をしたようだった。




*end*

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別れ  切ない  年上彼氏    ドキドキ  溺愛      男目線  大人 

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