*1・おっかな過ぎる上司*


 4月。私、橘小夏(たちばなこなつ)の胸は風に舞う桜の花びらのように踊っていた。おろしたてのベビーピンクのパンプスで、ついウキウキとステップを踏んでしまう程に。

 だって今日から私は『ひまわり出版・少女漫画部門』の一員なんだもん。ずっと憧れてた夢の部署。子供の頃からひまわり出版の少女漫画が大好きで、就職は躊躇うことなくひまわり出版を選んだ。

 大手出版社ながら私の情熱が届いたのか、見事採用されたのはいいけれど、配属されたのは少女漫画とは程遠い『ビジネス書・一般文芸部門』の営業事務。それでも部署のみんなはイイ人で、私はそこで楽しく仕事を覚えることが出来た。

 けれど、夢を捨てきれない私はずっと異動届を出し続けていて……ついに叶ったのが入社3年目のこの春なのだ。仕事は引き続き営業事務だけど、それでもようやく憧れの『少女漫画部門』に携われたのが嬉しい。

 そんな訳で私は張り切っていた。ひまわり出版の少女漫画は本当に素敵な作品が揃っていて、子供の頃読んだ漫画も今連載されてる漫画も何回も読み返してしまうほどだ。ロマンチックな恋、胸がキュンとする恋。ああ、たくさんの人に読んでもらいたい。そのためには私たち営業職が頑張らなくっちゃ。

「よーし、頑張って営業の補佐をして、本屋の売り場を倍に広げてもらうぞー!」

 会社へ向かう遊歩道で桜の舞う空を見上げて握りこぶしを突き上げる。ちょっと入りすぎた気合に、周りを歩いてた人がビックリしていたので、私は赤くなった顔を俯かせてその場を走り去った。

   

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