課長の独占欲が強すぎです。
・触れてください、壊れないから

*5・触れてください、壊れないから*


「食べないのか」

「…………」

 ホテルの1階に入っている和食レストランのテーブルで、私は目の前のお寿司に手を付けずじっと下を向いていた。


 結局、『部屋かホテルか選べ』と言われたものの答えられずにいたら、勝手に連れて来られたのはマリンパークから遠くないホテルで。

 GWだし予約もなしで泊まれまいと思っていたけど、GW当日だからこそドタキャンで空いてる部屋があったりした訳で。

 とにもかくにも、和泉さんの一存で私は本日ここに宿泊する事を決定付けられていた。

 けれど。これまでも散々彼の強引さに引き摺られるように従ってきたけど、今回だけは私も徹底して意地を見せる。

 初体験と云う人生で貴重な出来事を、彼の欲望に任せて流されるまま済ます訳にはいかない。

 そもそも和泉さんは私を好きなのか、私も彼に身体を許せるほど好きなのか、それすらも分からない状態で一夜を過ごすなんて、絶対に嫌だ。

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