課長の独占欲が強すぎです。
・赤っ恥ウサギは夜桜に耽る

*2・赤っ恥ウサギは夜桜に耽る*


 少女漫画部門に配属されて1週間後の金曜日、終業後に私の歓迎会が行われる事になった。

 場所は会社から少し離れた和風居酒屋で、なんでもお店から見える川沿いの桜並木がこの時期は満開なのだという。

 東さんが見つけたと云うそのお店は料理も絶品だそうで、実は和食が大好きな私はとても胸を弾ませてその日が来るのを楽しみに待った。

 そうして訪れた週末。

「晴れて良かった。桜ももう散り際だからね。雨が降ったら花が落ちちゃう所だったよ」

 お店に向かうタクシーの中で、東さんは助手席の窓から空を見上げて言った。その科白には同意するものの、私は上手く言葉が返せない。だって……。

 部署の人は全員で9人。3台のタクシーに分乗して行く事になったんだけど、私は東主任と寄りによって宍尾課長と一緒の車になってしまった。

 いや、別にいいんだけど。宍尾課長と同じタクシーが嫌なんじゃないけれど。ただ、身体のサイズの都合で助手席には中サイズの東さんが、後部座席には小サイズの私と極大サイズの宍尾さんが座る事になってしまっていた。

< 28 / 263 >

この作品をシェア

pagetop