片道切符。

朝顔が、咲く




窓を開けて、空を見上げれば、綺麗な星々が見える。

身体の熱を冷ますように、夜風を感じる。

ふーっと吐き出した白煙が、もうもうと空を駆け上がっていく。


「……ひどい」

煙草をふかして黄昏る俺の背中に、悲痛な声がかけられた。

それを聞こえないフリをしてみれば、すすり泣くような声が聞こえる。


「…なんだよ。」

振り返って発した俺の言葉に、タオルケットにくるまった物体が、

びくりと震えたのを俺は見逃さなかった。…見逃せなかった。


『抱いて』っつったのは、お前だろうがよ。

瞳潤ませて懇願してきておいて…。


「…やさしくして、よ。」

俺はため息を吐きながら煙草の火を消すと、窓を閉めた。


「……無理だっつったろ。」

俺は一応、彼女に忠告したはずだった。

懇願してくる彼女に、『無理だよ』と言った。

それは、彼女に触れたならば、俺はどうするかわからないからって意味で。

それでもなお引き下がらなかったのは、お前だろ。

あそこまで求められちゃ、俺も我慢なんかできなかったけど。


ずっと、ずっと、触れたかったんだ。

いまは心がなくても、昔の気持ちはまだ心の奥にある。


俺は彼女を、気持ちのままに、むちゃくちゃに抱いた。

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