月だけが見ていた
病室の窓から入り込む月光が
葉子の顔を淡く照らしている。


『打ち所が良くなかったみたいですね…いつ意識が戻るかは、何とも言えません』


さっきの医者の言葉が嘘に思えるほど、彼女の表情は穏やかだ。



ふと、窓の外に視線を移すと
大きな満月が夜空に浮かんでいた。



あぁ

今夜の月は こんなに綺麗なのに



「目、開けてくれよ…」



どこに行くんだよ



……葉子。
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