幸せそうな顔をみせて【完】
 そういって新は私の身体をいきなり引き寄せると抱き寄せた。新のシャツに頬を寄せると新から柑橘系の爽やかな香りが広がる。そして、私が驚くほどの大きな音を新の心臓が立てている。私がドキドキするのと同じくらいに新もドキドキしている?


「俺のことが嫌なら振りほどけ。もしも、このままならキスするから」



 ギュッと逃げられないように抱き寄せながらも一瞬だけ私が逃げるために腕の力を緩めた。でも、私は逃げることなくキュッと彼の首に自分の腕を絡めたのだった。気の利いた言葉は言えないけど、それでも私は自分の気持ちを口にする。きっとこの言葉だけで勘のいい新なら分かってくれるだろう。好きという気持ちを言葉に乗せて…私は耳元で囁いた。



『幸せそうな顔を見せて』
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