私が車に乗り込むと、副島新はゆっくりとハンドルを切る。


 私は副島新が運転する車に乗るのは初めてで妙に緊張していた。手慣れた運転をするなぁと思いながら副島新を横目で見ると、私の視線に気付いたのが、チラッと私の方に視線を移し、直ぐにまた前を見る。何か言いたげで、口を開きかけたけど何も言わずにまた、口を閉ざす。


 車の中の閉鎖された空間には当たり前だけど、私と副島新しかいない。そんな中で黙っている副島新の横で私も黙ってしまった。静寂な空間に時間だけが過ぎ、車窓から見える景色は流れていく。そんな車窓から見える景色を見ていたら、急に横からボソッとした言葉が聞こえた。


「退屈か?」

「なんで」

「会社では煩いくらいに話し掛けてくるのに何も話さないから」


 確かに副島新の言う通りだった。


 一緒に仕事をしていく上でコミュニケーションは大事だし、私も自分の思ったことをそのまま口にすることが多い。特に何を考えているのか分からない副島新に対しては他の人以上に話し掛けていた。


 でも、今は会社じゃない。一応、初デート。


 副島新は平然とした顔をしているし、私のように二人っきりの空間に緊張さえしてないようだった。そんな中、自分の中で幾度も言葉が浮かぶと水泡のように消えていく。まさか、こんな風にギクシャクしてしまうとは思わなかった。


「退屈じゃない。でも、緊張してる」





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