幸せそうな顔をみせて【完】
 冷たい水はゆっくりと喉の渇きを癒しながらゆっくりと流れていく。熱があるせいか水がいつも以上に美味しい。飲みなれた味のはずなのに今日は一段と美味しい。ふと視線を上げるとコクコクと飲む私を見つめる副島新の瞳がとっても優しくて…。急にベッドの上で密着しているのを意識してしまう。


 副島新は私の身体を背中から抱き寄せるかのように包むと、片手で私の肩を抱き、もう片方の手は私の持っているペットボトルに添えられている。


 熱があるとはいえ、ベッドの上で抱きしめられているような状態の今は…恥ずかしい。でも、嫌じゃなくてとっても嬉しい気持ちになってしまうから困る。私はこんなに甘えたことはなくて、いつもしっかりしていれるつもりだった。


 でも、私以上にしっかりしている副島新の前では素直に甘えてしまっていた。でも、いつもの私ではないと思いつつも甘やかす副島新の優しさに素直になってしまう。嬉しいと思ってしまう。


「まだ、身体が熱いな。どこか痛いところとかないか?」


 そう身体越しに響く声にドキッとしてしまう。身体の半分は副島新に抱き寄せられている状態だから背中の方から響く声と、耳元で囁くような吐息混じりの甘い声が胸をキュッとさせる。当の本人は何も感じてないかもしれないけど、私はどうしようもなく身体を強張らせるだけだった。水を飲み終わると、私は少しペットボトルを遠ざけると、副島新はそのペットボトルとベッド横のテーブルに置いたのだった。
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