ご懐妊は突然に【番外編】
「遥も悪くなったね」

匠さんは経済誌をパサリと閉じて眼鏡を外す。

「誰の影響かしら?」私は鼻の頭に皺を寄せて言う。

入念なスキンケアを完了すると、匠さんの待つベッドへと潜り込んだ。

「双子が生まれたら、ここの離れも手狭になるなぁ」

匠さんが私の下腹をさすりながら言う。

「生まれる前に本邸に移る?」

うーん…と匠さんは気のない返事をする。

「ちょっと考えてみようかな」と言って匠さんは照明を常夜灯に落した。

並んで横になると、定位置となっている肩のくぼみのところに顔を埋める。

「遥を正式に妻に迎え入れる日が待ちきれないな」

匠さんはそっと額にキスをする。

「浮気したら許さないから」

怖いな、と言ってクスクス笑いながら匠さんはそっと口付けた。


方向性は決まった。

後は目標を達成すべく日々の課題をクリアしていくのみ。

果たしてつつがなく結婚式の日を迎える事は出来るのだろうか。
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