ご懐妊は突然に【番外編】
「さぁ、心配もなくなったところで、仲良くしようか」

匠さんがベッドに上がってくるとスプリングがギシリと軋んだ。

慣れた手つきで私のドレスをスルリと脱がせると、そのまま床へ放る。

ドレスは床にハラリと落ちてまるでタンポポのようだ。

匠さんは私の首筋に唇を這わせると、私はくすぐったくて身をよじった。

「そういえば匠さん、純潔を初夜に奪いたいって言ってたね」

「純潔どころか、双子ちゃんがいるとな」

私達は目が合うとクスクス笑いあった。

「まぁ、人生計画通りにはいかないもんだ」

匠さんは悪戯っぽく片眉を上げて言う。

私は匠さんのYシャツのボタンを一つづつ外していく。

「遥も脱がせる姿がさまになってきたね」

匠さんが冷やかしてくるので、私は「もう」と言って頬を膨らませる。

シャツを脱ぎ捨てると、引きしまった上半身が露わになる。色っぽいそのお姿に、クラリとしてしまう。

私は堪え切れずに首の後ろへ手を回して引き寄せると、強引に唇を塞いだ。

「愛しています。三億円分くらい」

「それじゃあ足らない。…この家を入れたら…く円だな」

匠さんはがボソリと呟いたが、聞き取れずに「え?!」と眉根を寄せて聞き返す。

匠さんは人差し指を当てて眉間の皺を伸ばした。

「いや、その…なんだ…そこはプライスレスでお願いします」

匠さんは恥ずかしそうにペコリと頭を下げる。

私はクスクスと笑いながら再び匠さんに口付けた。


子どものように駄々をこねたと思ったら、急に紳士の顔になり、そして夜には男の顔を見せる。

くるくる変わる匠さんの表情に、私は今夜も翻弄されていくのであった。
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