印堂 丈一郎の不可解な生活
話は二日前に遡る。

丈一郎が調息法入門を志願したあの夜。

私は反対し、お爺ちゃんはそれでも教えると言った。

「ありがとよ爺さん!それじゃ早速やろうぜ!まず何をすればいいんだっ?少林寺三十六房みてぇな修行場があんのかっ?それとも木人でもぶっ叩くのかっ?ジャッキー・チェンの映画みたくよぉお」

興奮してまくし立てる丈一郎に。

「いや」

お爺ちゃんはゆっくりと首を横に振る。

「ぶっ叩かれるのは木人ではなく、君だ」

「え?」

キョトンとする丈一郎。

その瞬間、彼の視界は暗転した筈だ。

私が硬い木製の箒の柄で、頭を思い切り殴ったから。

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