印堂 丈一郎の不可解な生活
念の為に言っておくと、私は丈一郎を恨んでなんかいない。

そりゃあ私のお爺ちゃんだ。

死んだ事は悲しいし、今でも涙が溢れてくる。

何でこんな事になってしまったのか、もっと何か方法があったんじゃないかって、ずっと思ってる。

時間が巻き戻せるならそうしたいなんて、子供じみた発想までしてしまうほど。

お爺ちゃんは家族であり、私の親代わりであり、人生の先生でもあった。

私はお爺ちゃんがいるから、今まで生きて来れたと本気で思っている。

そんなお爺ちゃんが、我が身を捨ててまで丈一郎の命を救った。

そんなお爺ちゃんの選択を、そしてそこまでして助けた丈一郎を、どうして恨めるだろう。

それに。

「……」

きっと私以上に、丈一郎は責任を感じている。

後悔している。

どうして私が、そんな丈一郎を責められるだろう。

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