鏡の中の地下牢の男
鏡と女王
 むかしむかしあるところに、一人の女王様がおりました。女王様は自らの美しさに自信を持っていましたが、義理の娘が美しく成長するのを見て、魔法の鏡にこう問い掛けました。
「鏡よ鏡、この世で一番美しいのはだあれ? この世で一番美しいのはだあれ? この世で最も美しいのはだあれ?」
 精神の破綻。異常なまでの美への執念。しかし、鏡は動じずに答えた。
「無論、貴女様でございます。女王様」
 鏡がキイイ、と音を立てて扉のように開く。そして、美しい金の髪と蒼い眼をした男が現れ、女王に跪いた。
「今日もお美しい……」
 男はこの愛を囁く時のみ、表に――場所さえ限られてはいたが――出ることが出来た。手の甲に接吻し、それは徐々に腕へ、首筋へと落とされた。男は女王の愛人なのだった。
「愛しています……女王様……」
  男が首筋に顔を埋める。眼を嫉妬に燃やしながら娘は隠れてそれを見ていた。しかし、男もまたそれを見ていた。
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