「違うんです。ちょっと気まずいことがあって……」

そう言うと、専務がじっとこちらを見てきた。なんとなくいつもの専務とは違うような気がして、わたしは戸惑った顔で目を合わせていると、先に視線がそらされた。

「仕事に戻る。ハンカチ、どうもありがとう。お礼の件はまた連絡をさせてくれ」

「えっ、あっ……」

お礼なんていいです、と言おうとしてやめてしまった。厚かましいかもしれないけれど、でも、それがないと専務から連絡が来ないと思ってしまったから。

専務は視線を残しながらわたしに背を向け、去っていった。


結局、キスのことは聞けなかった。
気にしているのはわたしだけ。とくに意味のないものだから、専務は普通なのだろうか。

何だかもやもやしたものでいっぱいになってしまった。
さっきの専務の態度も気になる……。

それから、悠悟とこのまま気まずい状態じゃいけないと思う。話をしないと。

「はぁー……」

わたしは思いきりため息を吐いた。色々なことがあって考えてしまうことばかり。

けど胸の鼓動はやはり速くて、たぶんわたしは専務からの連絡を期待してしまうんだ――

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