陽だまりの天使

「だから、そんなじゃないって。坂木さん責任感が強いみたいだから、丁寧に返事してくれてるだけだよ」

「そうかなぁ、脈ありだと思うよ。だって面倒じゃない。毎日メールするとか」

「そんなことないよ。ほら、業務連絡とのついでとか?」

脈があるなんていわれたら、正直、満更でもない。

ただ、実際に会っていないから、不都合なことには目を閉じられるし、一緒にいることとはまた別だ。

もしかしたら直美の言うとおり、毎日のメールをすごく面倒だと思いながらも、いやいや義務感で返してくれているのかもしれない。

そんな後ろを向きがちな思考を、全力で前向きな直美が息が止まりそうなくらい強い力で私の背中を叩いて正面を向かせにくる。

「佳苗、もうちょっと自信持とう!プライベートの話もしてくれるんでしょ?」

「プ、ライベート、とも言いづらいかな。大体仕事の絡みの話だよ?」

とても自信の持てない内容と背中の痛みにつっかえながら、鼻息の荒い直美を宥める。

坂木さんからのメール内容を思い出しても、作品搬入の時に作品の裏に小さな傷がついてしまったけれどうまく修復できた話とか、額縁が発注したものと届いたものが違って困ったけど、逆にそれを気に入られて急遽変更した話とか、プライベートとは言い切れない仕事の一部。

とは言え、笑い話でもあるので、堅苦しいわけではない。

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