黄昏と嘘

・少しだけ


「う……。なんか冷えるなあ」

10月半ば近くになり、昼間はまだ暑い日って思える日があったりするけど、さすがに夜は冷えることの方が多くなった。
確実に季節は変わってゆく。

しかしアキラとチサトは相変わらずの日々が続いていた。

同じ所に住んでいるはずなのに互いに姿を見ることもない。
特にアキラは住んでいる形跡すらもよくわからない。


そんなある日の夜、チサトは自分の部屋のクロゼットの中にジャケットが1着もないことに気づき、ついでに着なくなった服を片づけ、秋冬物の服を出そうとリビングの隅にあるダンボール箱を引っ張りだしていた。

そのダンボールはこのマンションに越してくるためにモモカと一緒にまとめておいたものであり、アキラがいつも早く部屋へ持って行けと言わんばかりの鬱陶しそうな目で荷物を見ていたのをチサトは知っていた。
しかし面倒くさくて、重たくて、ついつい後回しにしてた。

早く片付けなければと思いながらもいざダンボールを目の前にするとどうもためらってしまい、そのうち秋も半ばになってしまったのだ。

とりあえずジャケットを取り出そうとチサトはゆっくりとガムテープをはがす。

あれ?手紙…?

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