黄昏と嘘

・本当のこと




窓の外からやわらかい日差しが入る。
チサトにとって久しぶり、のんびりとした土曜日だ。
普段は土曜も授業が入っているけれど、今日は別の日に補講というかたちで授業が行われるため、休講になったのだ。


時々寒い、と感じる日も出てきて、だんだんと朝が起きづらくなり、今日のように休みとなると、もうベッドの中が気持よくてなかなか出られない。

チサトはカーテンの隙間から差し込む日差しを眩しそうに見つめ、早く起きなくては、と思ってみるも、なかなか身体は言うことをきいてくれない。


静かだけど先生も今日は休みなのかなあ・・・。
っていうか朝早くから出て行って私が気付いてないだけかもしれない。


そんなこと考えていつまでもぼんやり、うとうとしていると机に置いてあるスマホの呼び出し音が鳴った。
チサトはその音で一瞬にして目が覚め、慌てて起き上がりる。

結局、寒くてやることがないとこんなきっかけがないと起きることができない。
そして取ったスマホの着信を確かめるとディスプレイには「石田モモカ」の文字。
慌てて通話ボタンを押す。


「え?石田さん?」

「チサトちゃん?元気だった?」


久しぶりに聞く彼女の声。
声を聞くだけでそれまでの彼女との日々が昨日のことのようによみがえる。
夏に別れまだ数ヶ月しかたっていないのに季節が変わっただけでだいぶ前のことに思えてしまう。


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