“毒”から始まる恋もある

しかも、親友と腹の底までスッキリ出来るほど毒を吐き出すっていうのならともかく、会社の同期となんとなくって言うのはちょっと辛い。
だったら一人のほうがマシなんじゃないかなって思うくらい。


彩音にはこういう気持ち、分からないのかな。
こういう誘いを平気で仕掛けてくるってことは分かんないんだろうな。


私は大学入試の時に一浪しているから、彼女より一つ歳が上になる。
三月生まれということでそこまで気にしてこなかったけれど、感覚のギャップみたいなのを初めて感じた。

とは言え、断るのもなあ。

友達付き合いは、出会いの一歩でもある。
今日の我慢が明日の合コンに繋がるのなら、と諦めて歩を進めた。



 メールで教えられた店はおしゃれな外観とは裏腹に、鍋がメイン料理というお店だった。

入ったらすぐ店員が声をかけてくれるのは合格、店の雰囲気が砕けた感じなのもまあ良し。
小上がり席への誘導もスマートである。


「わーい、刈谷ちゃん来たー」


彩音を含む同期の女子が三人と営業の男子二人がいる。

げ、谷崎までいるんじゃん。


「こっち座りなよ、刈谷」


営業部の谷崎はご自慢のレイバンの眼鏡を直しながら、自分の隣の座布団をトントンと叩く。
コイツとは色々あったから、あんまりお近づきになりたくないんだけどね。


「ではぁ、刈谷ちゃんが来たところでぇ。乾杯といきましょうー!」


既に何杯か飲んだ様子の彩音が、舌っ足らずな口調で乾杯の音頭を取る。

彩音は可愛い顔して酒好きだ。
理由なんておそらくなんでもいいのだ、酒が飲めさえすれば。

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