店を出て歩いていると、菫の動きがおかしい。
どう考えても真っ直ぐ歩いていないのだ。


「ほら、菫しっかりしなさいよ」

「大丈夫ですよう」


依存系女の「そんなに弱くないです」などという言葉はアテにならない。

黙って飲ませておいたらもう足取りがおぼつかなくなっているじゃないの。
日頃、酔っても助けに入る男がいるからこんな風に甘えるのよ? 
甘やかしている奴が責任取れよ。

とは言え、放置するわけにもいかない。
仕方なく私はふらふらしている菫の背中を押すようにして歩く。


「もう、さっさと里中くんでも呼びなさい。アンタを家まで送る気は無いわよ」

「私、電車で帰れます」


どの口がそれを言う。今にも座り込みそうなくせに。
どうせ、自分ばかり迎えに来てもらったら悪いとか思ってんだろうが。


「……さっさと電話しないと、そのへんの男二人ナンパするわよ。私も菫も持ち帰られるの。そうなったら困るのアンタでしょ、早くしなさいよ」

「ええっ。でも……」

「いいのよ。気を使われるなんて一番惨めよ、やめて」


苛立ちをあらわにすると、菫は急にシュンとしょげた。


「……ごめんなさい」


泣くなよ、面倒くさい。
言い訳もすんな。気遣いもいらないのよ。


「気を使ってるわけじゃないんです。ただ、私、どうしても刈谷先輩と話したくて」

「……さっきからずっと二人で話してたと思うけど?」


何をドン臭いこと言ってるのよ、この子は。
菫は潤んだ目を私に向け、ポソリと力が抜けたようにつぶやいた。

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