「えと、あの。ありがとうございました」

「付き合った礼なら何度も聞いたわ」

「違うんです。私、本当はずっと、先輩が怖いって思ってたんです。……ズルいとも思ってた。仕事押し付けられてるって思うことも何度も」


そうね。押し付けたわよ。
だって誰にでも出来る雑務なんて、グズグズしている子に任せれば充分でしょう。

どうせ、何をしたらいいかわからないーなんて言ってるんだから、むしろ仕事を与えてあげてるのよ。


「でも、先輩が鍛えてくれたから、私お仕事出来てるなって思えるようになってきたんです。今日だって、先輩が背中押してくれたから、お店も決めることが出来たし」

「なんなの? 菫酔ってるわね?」

「酔ってないですぅ。だから、ありがとうございます。私、今、ちょっとずつ自信ついてきたんです。刈谷先輩にこんなこと言えるなんて前は考えもしなかったし」


そうね、私もびっくりだわ。
そのお綺麗な発想にもかなりビビルけどもね。


常に小動物のようにビクビクしていた菫が、たどたどしくも自分の気持ちを吐き出していく。

立ち止まってそれを見つめながら、私はなんだか不思議な気分になった。


一年前には、菫と二人で飲みに行こうなんて考えたこともなかった。

こんな風に面倒をかけられることも、きっと「まあいいか」なんて思えずただ苛立つだけだっただろう。

変わったのは菫。でも私も少し変わったのかも知れない。
私の変化は、菫のとは違って若干諦めの変化だけど。

……だって疲れた。

いちいち気に入らない子につっかかっていく元気も、前よりはなくなった気がする。
コレが年をとるってことなの?

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