エチュード ~即興家族(アドリブファミリー)~
まさかのイントロ
11年前。

「・・・メンバーが俺を必要としてくれてることに応えたい気持ちもあるが、それ以上にやっぱ俺・・・諦めきれないんだ。だから俺、賭けに出ることにした」
「そう」
「RAIZ(ライズ)がデビューできるかまだ分かんねーし、まして売れるかどうかも分かんね」

私の母校でもある大学で院生中の善(ぜん)は、高校生の頃から、ロックバンド「ライズ」のドラムを担当していて、今でも時々、ライブハウスでライブをしている。
彼とつき合い始めて3ヶ月の私は、2回ライブに行って・・・すごいと思った。
善の、メンバーみんなの情熱に、圧倒された。

だから私は、正直に「大丈夫だよ」と言った。

大丈夫。
彼らなら絶対デビューできる。
そして売れるバンドになる。
彼らには、それだけの実力がある。

だから・・・。

「音楽でメシ食っていけるのか・・・先のめどもない俺の夢に、アキちゃんを巻き込むのは・・・。だからごめん。別れよう」

・・・やっぱり。
善の顔を見るなり、そう言われると思った私の予想は、当たってしまった。

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