七夕間近…。

立ち寄ったデパートのホールに、大きな笹が横たわっており、側には色鮮やかな短冊とペンを乗せた小さなテーブルが数カ所に置かれていた。
子供連れの家族やカップル達がその短冊に何かを書いては笹に嬉しそうにくくりつけている。

(七夕か…)

その様子を見て、森野藍里は箱に入っている短冊を一枚手に取り、意味もなくジッと見つめてる。

七夕……。小さい頃は物凄く楽しみにしていて、願い事を聞かれる度に「お父さんとお母さんに会えますように。」と書いていたのを、藍里はうっすらとだが、よく覚えていた。

(亡くなってたから、無理に決まってるのにね……。)

藍里は、ふぅと小さくため息をつくと、箱に戻そうとした……。


「なーんだ?藍里。七夕の短冊に何か願い事でも書くのかー?」

茶化すような口調で藍里に寄ってきたのは、幼なじみの柊 哲也だ。
サマーニット帽を被っている彼は、藍里の手にある短冊をヒョイッと軽やかに奪うと「懐かしいなー。」と呟く。

「テツ。探してたのは見つかったの?」

藍里は、鬱陶しがることもせずに、尋ねた。

今日は、幼なじみの哲也が欲しいものがあるとのことで、暇だった藍里は中学から友達の奈川陽菜と一緒にデパートに行くことにしたのだった。
今、陽菜は大好きなロリータ服の新作を見てくると言って、二人とは別行動している。

藍里の言葉に、哲也は首を横に振り、

「いや。店員に聞いたら、もう売れちまったらしくてさ……。あぁ~。あん時買っときゃよかった…。」

ど、ガックリと肩を落として残念そうに呟いた。
その、玩具を買って貰えなかった子供のような表情に、藍里はクスッと小さく笑ってしまった。
そんな、哲也の無念なオーラを覆すかのように、

「藍ちゃーん!」

という、裏声かと思えるかのような高い声が耳に届いた。
振り返ると、服屋で買ったと思われる茶色のビニール袋を下げた奈川陽菜が走り寄ってくる。
どうやら、新作のロリータ服は相当気に入ったらしい。
陽菜は、藍里の後ろにある笹を見ると、さらに興奮するかのように声を上げる。

「あ!七夕のお願い事!?書こう書こう!」

金髪のツインテールとロリータ服のフリルをピョコンと揺らして、陽菜は箱から短冊を取り、願い事を書き始める。
その様子を見ていた哲也と藍里は思わずお互いに顔を見合わせる。

「……ま。暇つぶしだと思っ

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