翌日。


「思えば、ラケットも非生命体だから、別に触ってもなんの不安もありゃしないと言うことが判明したぞ!」


あーあ、何を怖がっていたのだろう。


そうそう、本当にその通り。

なんとなく右手を使うように意識してしまい、ラケットを今まで右手で持っていた。

それが最大のハンディーキャップだとも気付かず、四年もスピードミントンをしていたのだから、俺も相当鈍い男だ。

本当は左利きの筈がそこそこ使える程度の右手でラケットを振り回していたのだから、そりゃあ伸び悩むことが多かった筈だ。

俺は左手でラケットを回して、ラケットの持ち手を右手から左手に馴染ませようとする。


その横で、ハジメが口を開いた。


「アウンは今日から左利きか?」

「おうよ。ラケットは非生命体。万歳だな」

「ばってん、ちゃんと生命体に触るんにも慣れとかんといかんばい。ほれ、握手」


ハジメが差し出してきた手を、じぃっと睨む。

引き気味で。

やっぱり、生きてる奴を触るのは、怖い。


「……」


その時ふと、頭にダンの言葉が蘇る。

俺の腕の暴走は、俺の精神的な問題であり、突発的に無意味に起こることではない。

周囲と俺自身の心がけ次第でどうとでもなる問題なのかもしれない。

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