それから十日もしない内の出来事だった。

孤児院から連絡が来て、電話先の院長が、"クロエを捨てた母親が現れたことを、俺に告げた"。


「…は?」

『クロエちゃんのお母さんだって名乗る人が来たんだよ。その人は、産まれたばかりのクロエちゃんを抱いている自分の写真を持ってきて、これが証拠だと突きつけて来たんだ。私は嬰児(えいじ)だったクロエちゃんを知っているから、あの写真は本物だ』


クロエは産まれた直後に捨てられた。

だから、産まれたばかりのクロエの姿を院長は知っているし覚えているし、その姿をアルバムにだって大切にとってある。

その写真と照合しても、女性が持ってきた抱かれているクロエの写真は、違えることなくクロエ自身だと認識出来るものだった。

何より院長が、その女性をクロエの母親だと確信したのは、その女性が、髪が長かった頃のクロエにあまりに酷似していたからだ。

とても綺麗な黒髪をしていたと言う。


クロエを産まれた直後に捨てた。

あまりに綺麗だったクロエを捨てて、今、クロエの家である施設にやってきた。


「……その人は、…なんて?」


それでも聞かずにはいられなかった。

俺の思い違いであってほしい。

そんなことないんだよって、院長の口から聞いて、安心させて欲しかった。

でも、やっぱり俺は分かってしまっていたんだ。

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