何故、母親が今頃になってやってきたのかという事を。


『クロエちゃんを引き取りたいって申し出を受けたよ。…でも、それはクロエちゃん自身が決めることだからね。アウンくんにこのことをクロエちゃんより先に話したのは、君に、このことをクロエちゃんに話してほしいからなんだよ。私が話したのでは、彼女はきっと一人で抱え込んでしまうだろうし、私ではその場で彼女を慰めてあげることが出来ない。きっと彼女にとって、大きな衝撃になるだろうから、アウンくんに、任せたいんだよ。お願い出来るかな』


院長の言葉が右耳から入って左側に流れていくようだった。

俺はただただ嫌な予感がして、夏の暑さから吹き出た汗なのか、それとも違う理由なのか、よく分からない汗を顔面に貼り付けて、何も答えず、受話器を置いた。

寮の中。

冷房も何もない一室には、外からの蝉の声が、いつもよりやけにうるさく響いていた。


「………………」


呆然としていた。

立ち眩みのように視界がピカピカ点滅して、時にはぼやけて歪んで反転してと忙しない。


そして、顎まで伝った汗がこぼれ落ちると---


「クロエ!」


俺は走り出していた。

嫌な予感がした。

左腕がぞわぞわして、ツノの根元がガンガン傷んで、それがクロエからのSOSだと俺には感じた。

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