未知の世界


ズキッ





ん?







頭が重い。





目を開けると真っ白な天井。




左右にはカーテンが閉められている。






あれ?私、どうしたんだっけ?










そうか、走ってて階段でこけたんだ。



 

頭、







何か巻いてある。







包帯?そんなに大きな怪我だったのかな?





私、入院してるの!?






うそ、帰らなきゃ。




起き上がると頭が再び痛くなる。





腕を見ると、点滴がされている。





外さなきゃ。





痛っ。





ベッドから降りて、カーテンを少しめくったが、幸い誰もいない。





寝かされたベッドの回りには、たくさんのベッドに重症な人が寝ている。




どこだろ?




とりあえず、誰にもばれずに外へ。





部屋を出て、廊下の窓から外を見ると、すでに真っ暗。




エレベーターまで行き、自分のいる場所が何階かもわからず、とにかく一階へ。すると、  
   




「どこに行くつもりだ。」






と背後から声がした。




やばい。ばれた。





振り返ると、そこには診察してくれた先生。



ものすごい怖い顔してる。




エレベーターの扉が開いた。




今だっ!





駆け込もうとした瞬間、私はエレベーターとは反対に体を引っ張られた。


  

「おい!逃げるな。」





静かな廊下に、先生の怒号が飛ぶ。





「家に、帰らないと。叱られます。」






私は、小さな声で抵抗した。





すると、先生の口から、




「家に帰るって、そんなひどい体にされているのに、家がいいのか」





えっ?





まさか、制服が、






着替えさせられてる。





ばれた。






「もう君の戻るところはない。今頃、警察と児童センターが施設へ行き、子供たちの保護をしているはずだ。
君の次の施設が決まるまで、帰る家はない。」





えっ?何言ってるの?
私には帰るところはあそこしかない。




少しずつ、今言われた言葉を理解するにつれて、頬に涙が伝わる。




私、どうなっちゃうの?





みんな、どこに言っちゃうの?




今朝、一緒にご飯を食べて、学校行って、それで今、みんなとバラバラになるなんて。





悲しすぎる。





「み、んな



どこにいっ、ヒッ、ちゃう、ヒッ、の?」






涙に鼻水に、口に入り込む。






「ヒッ、ハァハァ、ヒッ、ヒューヒュー」







ん?ひゅーひゅー?






「ヒューヒュー」







「ケホッ、ハァハァハァゲボッ、ふー」







何これ?






必死で呼吸を整えようとするけど、焦ってうまくいかない。どうしよう。





「ゲボゲボッ、ハァハァハァゲボゲボゲボゲボゲボゲボッ。ハァハァハァハァハァハァハァハァハァ」






「大丈夫、落ち着け。ゆっくり息を吸ってー。はいてー。吸ってー。はいてー。」








と私の背中をさする先生。 





「ゲボゲボゲボッハァハァハァゲボゲボゲボッハァハァハァ。」






咳が止まらなくて、息がうまくできないよ。










立ってられない、意識を保つのに必死になってきた。





これってなに?






風邪引いちゃったのかな。





 
すると、遠くから、バタバタと誰かの走ってくる音。





ん?ベッドもきた。






自分のことでいっぱいだけど、まるで第三者から見てるように感じる。





口にはマスクを当てられると、身体が宙に浮く。





胸を開けられる。





そんなのやめて!見ないで。






必死に両手で胸の前に手を当てて、先生の邪魔をする。




何か先生が言ってるけど、耳に入ってこない。
    





私の手はどけられて、点滴が刺されようとしている。





必死に動くから、看護師さんに押さえ付けられてる。






やめて!怖いよ。





身体中の震えが止まらない。





目の前がぼやける。





涙?






あの時と同じ。身体中に寒気が走る。

 
 





唇の震えも止まらない。






顔が強張ってきた。前しか見れない。






自分がわからない。






怖い。





みんなに見られてる。






必死で身体を動かすけど、ベッドに強く押さえ付けられていて、何も抵抗できない。






天井が動き始める。     






どこか部屋に入ったのかな?





まだ押さえられた身体。





恐さのあまり、身体が震え続ける。         






手首に、足首に、何かバンドのようなものでベッドに縛られてる。




左腕には点滴、口にはマスク。




胸は、開けられてしまったのだろうか。





冷たいものがつけられている。





私、呼吸してるのかな?










意識は、そこで途絶えた。





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