「――お見えになりました」


聞こえた声に、後ろへゆっくり振り返った。



――来たか。


視界に入る、数人を従えた長身の人物。


トレンチコートの裾を翻し、煙草を口に咥えた無表情の男。

周りの空気を呑み込むほどの威圧感を漂わせ真っ直ぐこちらに向かってくる。



「――進み具合はどうだ?」


真横で立ち止まるや否や、出される低い声。



「今のところはトラブルもなく順調です」


男が向ける視線の先には、工事が始まったばかりの高級ホテルの建設現場が広がっていて。



――呆れるほど、広いな。


話には聞いていたけれど、実際にこうして見て見るとその大きさに目を見張るばかり。



「ホテルだけではなく、ショッピングモールを始め複合施設はかなりの数だ。トラブルは必ず起こる。きちんと対応出来るようにしておけ」

「はい」


冷たい冬の風になびく黒い髪。

真上から射す陽の光にも細められることのない鋭い眼。

何を思い、考えているのか全く分からない氷のように冷たい横顔。




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溺愛  激甘  社長  イケメン 

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