真冬の、朝と言うには遅い10時過ぎ。

マンションのエントランスで車から降り立つと、運転席に座る女へと声を掛けた。



「送ってくれてありがとう。気を付けて帰って――」


濡れたルージュの唇が嬉しそうに上がり、赤のジャガーがゆっくりとエントランスを後にする。

その姿が見えなくなるまで見送り、踵を返すとキーをかざして中に入った。



――…買ってからここで寝たのって幾晩あるかなぁ…。


自宅にもかかわらず、着替えに戻るだけの日々が続いてることに思いを巡らせる。


会社からもGLANC・グランからも近いこのマンション。

買った当初からしばらくの間は、俺だけじゃなくあの兄貴もここで夜を過ごすことなどほとんどなくて。



――毎晩、違う女と高級ホテルのスイートだったのに。


常に子供の頃から女に囲まれていた俺と、

寄せ付けないくせに女を切らすことのなかった兄。


どちらにも共通するのは、

「愛さない」

ことだった。



――…まあ、俺は今もそうだけど。


コンシェルジュに軽く手を挙げフロントの前を通り過ぎる。



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溺愛  激甘  社長  イケメン 

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