Cry for the moon
“相思相愛なんだね。”

彼女が何気なく言った一言を、ふと思い出す。

(バーカ…。そんなんじゃねぇよ…。)

柔らかく微笑む彼女の笑顔を思い出して、リュウトは思わず笑みを浮かべた。

(ガキの頃、酒井の事、ちょっと好きだったんだよな…。大人しい感じだったけど誰に対しても優しくて…ホワンとしてて…。うちの家にはない雰囲気だったもんな…。)

彼女の持つ柔らかな空気は、リュウトにとって憧れでもあったし、一緒にいると楽しくて、自分も優しくなれそうな、そんな気がしていた。

< 55 / 512 >

この作品をシェア

pagetop