シルビア

◆「聞こえたから」






ふたりが喧嘩をする時のパターンは、いつも大体決まっていた。



些細なことで私が怒り、そんな私をなだめるようにへらへらと謝る望。

丸め込まれてたまるか、と思うのに、いつも通りのペースで笑う望に、結局丸め込まれてしまう。



『謝っておけばいいと思ってるんでしょ』

『んー?悪いとは思ってるよ?半分は』

『はぁ?半分ってどういう意味よ!』

『もう半分は、怒ってる顔もかわいいなーって、思ってる』



へへっと笑ってみせた望は、私がそうやって不意打ちで甘い言葉を言われると弱いことを知って言っている。



そう、望はいつだって私のことを全て分かりきっているんだ。

悔しい、くらいに。






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