その晩あまりよく眠れなかった凜香は、翌朝、ぼんやりした頭で目を覚ました。透也とどんな顔をして向き合えばいいのかわからない。

(あー、もう、ずる休みしたい)

 けれど、もちろんそういうわけにはいかず、せめて気分だけでも上げようと、お気に入りのベージュのスーツと、嫌味課長を見下ろすために十センチヒールで出社した。

 エレベーターで企画開発部のある五階で下り、自動販売機コーナーでブラックの缶コーヒーを買ってオフィスに入る。

「おはようございます」

 オフィスを見回したが、透也はまだ来ていない。凜香はすでに出社している数名の社員に挨拶しながら、ロッカールームに向かった。

 ジャケットを脱いでハンガーに掛け、ロッカールームから出たとき、オフィスの入り口のドアが開いて、チャコールグレーのスーツ姿の透也が入ってきた。

「おはようございます、七瀬さん」

 名字で呼ばれてしまうと、昨日と一昨日の出来事がまるで幻だったかのように感じてしまう。

「おはよう、葛木くん」

(なんか……胸が痛い)

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