恋する淑女は、会議室で夢を見る



・・・



アイスクリームを近くのテーブルに置いた桐谷遥人を
クスクスと笑いながら
鈴木翼がポツリと言った。


「女性が多いパーティでよかったですね」

「ん?」


「―― もし この場に大勢の男がいたら…

 溢れる涙でキラキラと光る美しい瞳は
 一体何人の男を恋に落としただろう?…
 ふと、そんなことを思いましてね」

軽くおどけたように首を傾げ
では、と軽く会釈をして鈴木翼はその場を立ち去った。





・・・





女子トイレの個室に入ると、
真優は両腕を抱えるようにして小さくなった。


ここまで我慢してきた涙が
ポロポロとこぼれ落ちる…。




―― バカみたい


こんなだから
氷室先輩にも 専務にも
子供扱いされるんだ…



いい加減
事実を自分を受け入れなよ 真優

強くなりなよ


  もっともっと強く…


震える唇を噛みながら
そう自分に言い聞かせた。





・・・


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