恋する淑女は、会議室で夢を見る

立ち止まって振り返る桐谷専務と瀬波をチラリと見たマー先輩は

「KIRITANIで働いてるの?」と聞きながら
名刺を出し、胸ポケットからペンを取りだして
スルスルと何かを書く。

そして
「そうなんです」
と答える真優にその名刺を渡して

小さな声で真優に囁いた。
「またね」

あらためて桐谷専務たちに向けて会釈をした白木匡は、
真優に微笑かけて、同行する人たちと廊下を進んで行った。


ドキドキしながら
慌てて専務のところまで走った真優は
「すいませんっ」

エレベーターに乗ると
指を開いて、手の中にある名刺をそっと見た。


株式会社 M&M
CEO 白木 匡


… CEO?


「誰?」

いつの間にか、上から覗いていた専務に聞かれ
真優は慌てて名刺を隠した。


「せ…先輩です
 大学の…」

「ふーん」



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