恋する淑女は、会議室で夢を見る


一昨日の夜、
遥人の帰りを待ちかねていたように
氷室仁と西園寺洸という2人の親友が桐谷邸に現れた。

『遥人、婚約ってマジか?
 真優は普通に真面目な良い子なんだぞ?』

ソファから身を乗り出した仁は
遥人を睨んでキリキリと眉を顰めた。


『なにそれ
 良い子だと婚約しちゃいけないの?』

『お前さ、本気なんだろうな?』

『…やれやれ
 親友に、俺はそこまで信用がなかったとは』

それまで黙って聞いていた洸は洸で、

『婚約おめでとう、遥人』

淡々と祝いの言葉を口にしたが、
何に対してなのか、遥人を見るその目は
憐憫の色を隠していなかった。





―― そういえば

俺が真優と結婚したいと伝えた時、
瀬波は声を失って唖然としてたっけ

ったく、どいつもこいつも
全然わかっちゃいない


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