恋する淑女は、会議室で夢を見る
ゴクリ と息をのむ。


真優は、グラスを手にしている時じゃなくてよかったと思った。


―― グラスを持っていたら
  落としてしまっただろう…

そう思いながら、微かに震える手を
 ギュッと握りしめた。





 ドキドキドキドキ





*...*...*...*...*


 

それからほどなくして
氷室仁は、恋人の腰を抱きながらバーのドアから 消えていった。



「あのままホテルに直行ね」

 ブッ

絵理の発言に 真優はカクテルを吹きだしてしまった。

「な…何言ってんの」

「ん?先輩って一人暮らしなの?」


「…知らない そんなこと」


あ、真優ったら赤くなっちゃって
まったく お子ちゃまなんだからぁ と笑ったあと、

「それにしても 見てるほうまで腰が抜けちゃいそうな
 うっとりしちゃうキスだったねぇー

 いいなぁー

 あたしもあんな恋人がほしいー」


最近恋人と別れたばっかりの絵理は
ため息交じりに、しみじみとそんなことを言った。
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