恋する淑女は、会議室で夢を見る



「それにしても羨ましいわぁ~
 桐谷専務と一緒に仕事ができて」

「え? そうなんですか?
 変わってほしいくらいですけど…」


「何言ってるの
 秘書課の皆が、自分かも?って期待してたのよ~
 そこへいきなり営業から真優ちゃんが来るんだもの
 正直みんなガッカリしてるんだから」

「そうなんですか!?
 信じられない…」


―― 真面目なんだか
 優しいんだか
 はたまたふざけてるんだか
  全然わからない人なのに?

そう考えると、自然と眉間に皺が寄って来た。

「本当にうれしくなさそうね」

「はい ちっとも
 営業の仕事は好きでしたし
 秘書のお仕事なんて全然わからないし…
 お仕事だからがんばりますけど…」


クスクス

「真優ちゃん、もしかして
 桐谷専務の前に出ても、ドキドキしないでしょ」


「? ドキドキですか?

 …うーん」


―― ファーストキス事件と
  お姫さま抱っこ事件は別として

どっちかっていうと
あのバカにしたような態度にムカつくくらいなんだけどなぁ

なんてことを思いながら
ますます怪訝そうに顔をしかめる真優を見て

「なんとなくわかった気がするわ
 どうして真優ちゃんなのか」

杏先輩はクスクスと笑った。


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