千年姫の幻想界
遥か遠く、高い空の上。
そこには神々が存在した。
神は順に、次の世界を創った。
天使のいる天界
悪魔のいる暗黒界
魔法使いのいる魔界
人間のいる下界
罪人のいる地獄界
そして最後に、術使いのいる幻想界──
幻想界は、“神の庭”という二つ名を持つ美しさ。
一つだけの大陸は、森と町に別れている。
不思議な木や花が茂る森には妖精。
和を基調とした広い町には術使い。
透き通ったウォーターオパールのような海には、人魚達が住んでいる。
それらの全てを統べるのが、姫。
数百年に一度の“星の降る夜”に、幻想界で崇められている星の神、伽凛に選ばれた者が姫となる。
星降る夜には、天から光が降ってくる。
それはそれは美しく、住民達は町中の明かりを消し、神からの光を迎える。
そして星祭りと称して七日間、新たな姫の誕生を祝うのだ。
術使いの寿命は約二千年。
長い長い年月の中、若い女性の誰もが姫に憧れを抱く。
そんな星祭りが、あと二ヶ月後に迫っていた──