イジワル婚約者と花嫁契約
第九条『なにがあっても夫を信じること』
「血液検査の結果も問題ないし、傷口の炎症も見られないし、そろそろ退院しても大丈夫かもな」

「そうですか……」

手術してから十日が過ぎた。
術後の経過も良好で痛みも感じなくなり、いよいよ退院の目途が立ったようだ。

「まぁ、こうやって毎日灯里に会えなくなるのは残念だけどな」

「……私は早く退院したいです」

ボソッと言い放つと健太郎さんは「冗談だよ」と言いながら、顔をクシャっとさせ笑った。


梅沢さん達の話を聞いてしまったものの、忘れようと決めた。
それでもたまにこうやって健太郎さんと話しをすると、どうしても脳裏に浮かんでしまう。
だけど、ただ浮かんでしまうだけで決して聞こうとは思わなかった。

だってもし聞いたとして、梅沢さん達が話していたことが真実だとしたら……?
それを考えたらとてもじゃないけれど、聞く勇気など持てなかった。
ただ健太郎さんとの今の幸せな関係を壊したくなかった。

「明後日くらいには退院してもいいだろう」

「明後日、ですか」

「あぁ。親御さんには俺から連絡しておくから」
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