初恋パレット。~キミとわたしの恋の色~

モモと、モモ

 
それからしばらくして、百井くんとわたしは、住宅街の一角に店舗を構える美容室『Re・plum(レ・プラム)』の前に立つことになった。

外灯の明かりによって浮かび上がるのは、1階が店舗、2階が住宅になっている、こざっぱりとした印象の家--つまり百井くんの家だ。

2階にはまだ電気はついていない代わりに、半分ほどブラインドが下ろされ、【close】の看板がドアの前にかけられた店舗の中では、忙しく閉店後の片付けをしている女性の姿がある。


「あれ、母親」

「見ればわかる」

「なんで怒ってんの」

「……」


返事をしなかったのはべつに怒っているからではなく、ここに来るまでになにも教えてくれなかった百井くんにいい加減呆れたからだ。

加えて、泊まっていってもいいとまで言った百井くんの中では、わたしを〝女の子〟として認識する部分がひとつもないんだと再認識させられて、移動中に何度、泣きたくなってしまったことか。

本当になにが悲しくて家にお呼ばれしなきゃならんのだ。

踏んだり蹴ったりだよ、ほんと……。


「親もニナのこと知ってる。行くぞ」
 
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