王様とうさぎさん
「ともかく、知らない女とは結婚したくないんだ」

 このままだと、あの総代に無理矢理結婚させられる、と言い出す。

「はあ。
 まあ、お気持ちはわかりますけど。

 でも、貴方にとっては、私も知らない人でしょう?」

「だが、お前は二、三度、社食で見たことがある」

「……見合い相手も、三度出会えば、追いつくと思いますが、その程度なら。

 ところで、なんで、私が霊が見えるってわかったんですか?」
と言うと、それは秘密だ、と言う。

「頼む。
 この日曜に、うちに来てくれ」

「厭です」

 去ろうとすると、腕を掴まれる。

「待て。
 お前、その台車で何を運ぶんだ?」

「コピー用紙ですよっ」
と手を振りほどこうとしながら叫んだ。

 だが、大きく体温の高いその手が半袖から覗く腕を直に握って離さない。

「何箱?」

「三箱ですけど?」

「それ、運んでやるから、結婚しろ」

 もう訳がわからないんですが。
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