~SPの彼に守られて~
◆episode06
 夜景が綺麗な湾岸エリアにある巨大観覧車で鷹野さんに想いを伝えようとしたら拒まれ、今は鷹野さんのお父さんが経営するお店に向かっている最中だ。

「もうすぐ着くが、そっちは以上は無いか?」
「………」

 鷹野さんはインカム越しで白鳥さんからの警護についてのやりとりをしていて、私は黙ったまま外の景色を眺めながら観覧車の中でのことを振り返る。

 何で巨大観覧車の中で想いを伝えようとしちゃったんだろう、それさえしなければこんなにも気まずい空気にならなかった筈なのにと、下唇をきゅっと噛みしめながら自分のしたことに後悔をした。

「マズイな、鷲宮さんがいる」

 顔をあげてお店の前を見ると、玄関先に鷲宮さんと白鳥さんが立っていて、鷲宮さんの表情はかなり怒っている。

「俺は車を停めてくるから、先に降りて2人のところで待っていろ」
「はい」

 鷹野さんはこの後に鷲宮さんから何を言われるか想像が着いたのだろうか、やや眉を寄せ、私は先に普通乗用車から降りて鷲宮さんのところに行った。

「ただいま帰りました」
「吉野様、お帰りなさいませ。お疲れでしょう、お先に部屋に戻って休んでください」
「でも…」

 まだ鷹野さんがこっちに来ていないし、勝手に部屋に戻ってもいいのかな。

「鷹野と少し話をしたいので、どうか先にお休みください」
「……分かりました。鷲宮さん、白鳥さん、お先に失礼します」

 そう言われてしまうと何も言い返せられないので、先に部屋に戻らせてもらった。

 先に1人で部屋に戻り、荷物を部屋の隅に置いて、ルームウェアに着替える。

 部屋の電気を落としてベットに潜り、瞼を閉じると思い出すのは、巨大観覧車のカゴの中で見せたあの切ない表情をした鷹野さんで、おでこにキスをした意味は何だろう?

 私の想いに応えられないかという意味なのか、それとも……、明日の警護では普段通りに鷹野さんと接することが出来るかな?あー、悶々として何度も寝返りを打つも、キスの意味を考えちゃって寝れそうにもないや。
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