ふりむいてよキャプテン

今年の夏来年の夏

「そこに全員並べ。マネージャーもだ」


七月中旬、夏大までいよいよあと一週間。
背番号も、対戦校も発表され、みんなの士気も高まってきている練習後。

バット片手に、サングラスをかけた高田先生により、一塁線上に、いつき先輩を先頭に一列に並ばさせられる。


「今から校歌の練習をする」


先生が古いタイプの音楽を聞く機械のスイッチを押すと、いきなり流れ始める私たちの校歌。


「あおあおとー......、......なが......。
......わ、われら、黒沢西」


突然流れだした校歌にみんな隣の人をちらちら見ながら、自信なさげに歌い出す。


始業式や終業式の時に歌う校歌。
実は、全校生徒のほとんどの人が口パクで、クラスの学級委員長タイプの真面目な人しか歌っていないという不真面目っぷりだ。


そんなわけで、当然みんな歌詞がうろ覚え。
情けないことに、かろうじて歌えたのは一番だけで、二番に入ると誰も歌えなくなった。
< 391 / 604 >

この作品をシェア

pagetop