ふりむいてよキャプテン

絶対に恋したりしない

「ねぇねぇ、またきてるよ。あのマネージャーのこ」


お昼休み、窓側一番後ろの私の前の席に座るゆっちが、視線だけで指した方向を見る。


「ああ......、さほちゃんね」


廊下側の真ん中の席に座るにっしーは、窓を開けて廊下にいるさほちゃんと話している。

それを見るとちょうどさほちゃんと目が合って、笑顔で手を振られたので、ふりかえしておいた。


「前からたまにきてたけど、あみとにっしーが話さなくなってからますます来るようになってない?
あのこにっしー狙いなの?」

「そうかもね......」


私の机の上にペタッと顔をつけて小声で話すゆっちに、私も小声で返す。


私がにっしーに関わらないと言ってから一週間以上たったけど、あれから一言も話していないし、部活の用事でさえさほちゃんに全て伝えてもらっている。

さほちゃんでさえ、ちゃんと話した方がいいんじゃないですか?と言ってくるくらいに、本気で関わってない。


「ふーん。いいのー?
そのうち付き合っちゃったりするかもよ?」

「いいんじゃない?
にっしー狙いの子は内心ギリギリしてるかもだけど。
さほちゃんくらい可愛ければ、誰も文句言えないだろうし」


小野くんとかが女子と話してたら大事件だし、後輩が毎日会いにきてたら、ちょっときてくれるー?生意気なのよアンタとかシメられちゃう展開もありえる。

だけど、普段から女子とも気さくに話しているにっしーがマネージャーで後輩と話していたところで、今さら騒ぐ人はいない。


男子には彼女ー?とか冷やかされてたし、態度には出さなくても内心ギリギリしてる女子もいそうだねと冗談混じりに言えば。

ゆっちは、顔を上げて真顔で私の目を見つめた後に、クスッと笑った。









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