今夜、上司と恋します
*
休日明け。
広瀬と顔を合わせるのが少しだけ憂鬱だ。
それに佐久間さんと顔を合わせるのも、どことなく複雑だ。
それでも仕事だから、仕方ない。
出社早々、目の前にいたのは広瀬で私は面食らった。
ラスボスに最初から会っちゃった感じだよ。
「広瀬、おはよ」
おずおずそう言うと、
「坂本、おはよ」
思いの外広瀬は普通だった。
あれ。気にしてないんだろうか。
それとも、普通に接してくれたんだろうか。
自分の席に着き、パソコンを立ち上げながら私は頬杖をついた。
そこに。
「佐久間課長、おはようございます」
後ろからそう声がして、ドキッとした。
佐久間さん。
ゆっくりと振り返り、佐久間さんの姿を視界に捉える。
今日もぴしっとしたスーツ。
さりげなく光るネクタイピン。
……わかんないな。
前を向き、はあっと小さく溜め息をつく。
そんな私の背中に、佐久間さんが声をかけてくる。
「坂本、おはよう」
「おは、おはようございます!」
まさか、声をかけられると思ってなかったから動揺して上ずった。
なんてカッコ悪い。
佐久間さんは大して気にしていないようで、もう自分の席に向かっていた。
うっわー。私だけめっちゃ意識してるわ。
いや、別に私は意中の相手でもないですし。
わかっちゃいるけどね。
何動揺してるんだか。