今夜、上司と恋します

*




休日明け。
広瀬と顔を合わせるのが少しだけ憂鬱だ。

それに佐久間さんと顔を合わせるのも、どことなく複雑だ。


それでも仕事だから、仕方ない。


出社早々、目の前にいたのは広瀬で私は面食らった。
ラスボスに最初から会っちゃった感じだよ。


「広瀬、おはよ」



おずおずそう言うと、

「坂本、おはよ」

思いの外広瀬は普通だった。



あれ。気にしてないんだろうか。
それとも、普通に接してくれたんだろうか。

自分の席に着き、パソコンを立ち上げながら私は頬杖をついた。


そこに。


「佐久間課長、おはようございます」


後ろからそう声がして、ドキッとした。
佐久間さん。


ゆっくりと振り返り、佐久間さんの姿を視界に捉える。
今日もぴしっとしたスーツ。
さりげなく光るネクタイピン。


……わかんないな。



前を向き、はあっと小さく溜め息をつく。
そんな私の背中に、佐久間さんが声をかけてくる。


「坂本、おはよう」

「おは、おはようございます!」


まさか、声をかけられると思ってなかったから動揺して上ずった。
なんてカッコ悪い。


佐久間さんは大して気にしていないようで、もう自分の席に向かっていた。


うっわー。私だけめっちゃ意識してるわ。
いや、別に私は意中の相手でもないですし。


わかっちゃいるけどね。
何動揺してるんだか。


< 83 / 245 >

この作品をシェア

pagetop