記憶の輪廻
二百年越しの記憶

蘇る魂

"「あら、暁里ちゃん何処にいくの?」"

"「んー?…いつもの所だよ。」"

"「本当に好きねぇ。小さい頃から夏におばあちゃん家に来るといつもあの山に行くんだから。」"

"「どうしても行きたくなるの。……自分でもわかんないけどね。」"

"「おばあちゃんの所に来た時位しか行けないものねぇ……。まぁ、思う存分行ってらっしゃい!」"

"「有り難う!行ってきます。」"











田んぼや川に囲まれた、舗装されていない凸凹の道を黙々と歩き続ける。

周りには誰もいない。

私がいつも住んでいる東京とは正反対だ。

「暑い……。」

汗が滴り落ちる。

「何で毎年こんな事をしてるんだろう。」

私は東京のとある高校に通う高校2年生。
沖野 暁里(おきの あかり)。

毎年、夏休み期間である1ヶ月の間、かなりの田舎に住んでいるおばあちゃんの家に滞在している。

私には普通の人とは違う事がある。

覚えは無いが、夏や田舎、自然、昔の民謡、時代劇。
これらに関連することがあると懐かしい感覚に襲われ、勝手に涙が溢れだし、帰らなければならないという使命感に襲われる。

そして、私がどうしても行かないと気が済まない場所が今向かっている場所。
祖母の家の近くにある小高い丘の様な山。

「見えてきた…………後少しっ。」

目の前に見えて来たのは懐かしい風景。

あぁ…此処に来たかったんだ。

山の頂上に登ると下の風景が一望出来る程に開けた場所になる。

「何だか……今日は此処だけじゃ物足りない。」

周りを見渡すと奥の方に続いている場所があった。

「今まで気が付かなかったな。」

そちらの方に惹かれて奥へと進んでいく。

するとそこには石で作られた誰かのお墓があった。

「こんな所にお墓?……あったっけ?」

近くに寄り、良く見てみると消えかかっているが名前が書いてあった。

「…………織原 燐(おりはら りん)?………………その名前…何処かで……。」

親しみを感じる名前。

その隣には一本の刀が地面に突き刺さっていた。

衝動的に刀を握りたくなり、握ってみる。

「……!?!!?」

頭に流れてくる鮮明な映像。
刀を持った時の体の感覚。
恐怖と悲しみ、苦しみで満たされた気持ち。

全てが蘇ってくる。

「そっか。私………………」








ー人斬りの女剣客で幕府の犬、織原 燐だったんだー

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