死神のお仕事

自由の意味



その日も、いつも通りにサエキさんの家へ向かった。が、マンションに入ろうとして、驚いた。オートロックの玄関が開かない。いつもの部屋番号をいれても、インターホンの反応もない。

一体どういう事かと、慌ててサエキさんに電話を掛けてみるも、ツーツーと、話し中のような音が鳴ったまま、どこにも繋がらなかった。


もういいやと、一日目は諦めた。サエキさんの様子も可笑しかったし、何かあったのかもしれない、くらいの気持ちで。

でもそれが二日、三日と続くうちに不安は募り、一週間が経つ頃にようやく理解した。もう私はサエキさんに会えないのだと。


好きにしていいと、私に告げたサエキさん。
上司と部下の関係は無意味だと言ったサエキさん。
好きにしていいというのは、こういう事だったのか。
関係性も何も無くして、私は私で生きていけと、あれはそういう決断だったんだ。


もう私は、見捨てられたんだーー大切だって、言ってくれたのに。

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