死神のお仕事

済まされない事実


「私の名前を、知ってるんですか?」

「はい。興味がありまして。セナを通じてこちらへ呼び寄せたのもボクです」

「興味、ですか」

「あなたの持つ魂に」


物腰柔らかに話すキリヤさんだけど、その目は野生的に鈍くギラギラしている。これは死神特有のものだなと、ここの所の経験から知った。

どんなに激烈な想いであろうと、何かで覆われて見えにくくし、そこへ誘い込むような独特の色で感情を語る。その目と向き合う度に、毎回深淵を覗き込むような心地だった。アラタさんも、セナさんも、サエキさんも、この人も。


「もう、魂はあげられません」


これはハッキリさせないと。ただでさえセナさんに取られる予定なのに、これ以上は無理だ。


「大丈夫。人間の魂はいりません。セナと約束したのならそっちで上手くやって下さい」


とりあえず座れと促され、入ってすぐに置いてあった椅子に座った。

人間の魂に興味が無いのなら、なんで私は呼ばれたんだろう。隣に立っていたセナさんはベッドの方に雑に横になって、キリヤさんに注意される。渋々上半身を起こすセナさんは、キリヤさんの言う事を聞かなければならないようだ。まるで上司と部下。サエキさんと私。

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