じいさんへの挨拶が終わって、常務室に入る。

急な異動で、前任者の荷物が残ったままの乱雑な部屋。

デスクの上には書類が積み上げられ、棚には書類と本がごちゃ混ぜに入っている。

前の田崎常務はあまり整理整頓が好きではなかったらしい。

それに綺麗好きでもないらしい。

下手に机に近づけばほこりが舞い上がりそうだ。

潔癖性ではないつもりだが、ここで仕事をする気にはなれない。

「今日は社長室で仕事をするしかないか」

魔法の杖でもない限り、ここを一瞬で綺麗に片付けるのは無理だろう。

ハーっと軽く溜め息をつくと、ノックの音がして俺の担当らしき秘書が入ってきた。

「田中美鈴です。これから宜しくお願いします」

緊張した面持ちで田中さんが軽く頭を下げる。

背は百五十五ぐらいだろうか?

秋月と比べると小柄で、顔も可愛くて男受けしそうだ。