俺様常務の甘い策略
「さあ、早くこのファイル片付けて、しゃぶしゃぶ食べに行くわよ。藤堂も暇なら手伝いなさいよ」

私の言葉に藤堂が苦笑いする。

「俺をこき使うのって秋月くらいだよ」

「あんたにだけは言われたくないわ」

バシッと藤堂の胸板を叩いて彼と目を合わせると、お互いニッと笑う。

こういう関係は悪くない。これって夏海ちゃんが言ってた対等ってやつか?久々にちょっとワクワクする。

でも、藤堂がスーツのジャケットを脱いで腕捲りする姿を見て、何故かドキッとしてしまった。

……こいつってこんなにセクシーだったっけ?

書類を整理しながら藤堂を上目遣いにチラッと見ると、こいつと目が合った。

「俺の顔に何かついてる?」

私の心を見透かすように、藤堂がじっと私の目を見る。

「……何でもない」

冷静になれ、沙羅。相手は藤堂よ。

頭を振りながら小声で呟いて、私は仕分け作業に没頭した。

そんな私をずっと藤堂が注意深く観察していたとは知らずに。
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